徳島県小松島市にある金長神社へ行ってきました。
金長神社には「金長」という名前の狸の神さまがお祀りされていて、ジブリアニメの「平成狸合戦ぽんぽこ」にも四国の三大狸として登場しています。
小松島市の市営グラウンドの隅っこにポツンとある神社で、基本的には社務所も無人でふだんは参拝客の姿もほとんどなく、とてもひっそりとした神社です。
今までは御朱印がありませんでしたが、2019年の元旦から御朱印の頒布が始まりました。
金長神社へのアクセスと駐車場情報
〒773-0015
徳島県小松島市中田町脇谷
金長神社は小松島市の市営グラウンドの中にあります。
市営グラウンドは小松島市の中心部からは少し離れていて、最寄り駅となるJR南小松島駅からは徒歩30分くらいの場所にあり、かなり遠いため車でのアクセスがおすすめです。
金長神社の駐車場
金長神社には神社専用の駐車場はありませんが、参拝客は神社前の通路脇や空き地などに車を停められるようになっています。
市営グラウンドには専用駐車場がありますが、神社の場所からは少し離れています。
金長狸をお祀りする「金長神社」って?
金長狸は「阿波(徳島県)の狸の総大将」ともいわれる当時206歳の古狸。とても義理固い狸で、徳島県では今でも狸といえば「金長さん」というほど親しまれています。
江戸時代、小松島市の日開野で子供にいじめられていた狸を通りがかった染物屋の主人・梅山茂右ヱ門(もえもん)が助けたところ、恩義を感じた金長は梅山家に住み着き、狸の神通力で染物屋を大繁盛させました。
その後、狸としての位を持たない金長は津田(現在の徳島市津田町)の「六右衛門(ろくえもん)」
という四国狸の頭領のもとで修業をし、正一位を目指しました。
たぐいまれなる秀才で頭角を現す金長をおそれた六右衛門は、娘婿として金長を迎えて自分の傘下に加えようとしましたが、茂右ヱ門に忠義を誓う金長はこれを断りました。
後世に伝わる「阿波の狸合戦」
このまま金長を日開野へ帰しては、そのうち自分の立場が金長に奪われるに違いないと考えた六右衛門は金長に奇襲攻撃をしかけます。
父の計画を知った六右衛門の娘・小安姫は愛する金長を守ろうと命を絶ってまで止めようとしましたが、愛娘の死により六右衛門はさらにヒートアップ。
この奇襲により金長の一の子分である「藤ノ木寺の鷹」は金長をかばって討死し、金長はなんとか日開野へと帰り着きました。
鷹の弔い合戦として六右衛門を討つために日開野で仲間を募り、迎え撃つ六右衛門勢との激しい戦闘が三日三晩繰り広げられ、最後は大将同士の一騎打ちとなり金長が勝利。
しかし、六右衛門との一騎打ちで致命傷を負った金長は大和屋に瀕死の状態で帰り、茂右ヱ門に今までの礼を言い「死後も永遠に梅山家の守護となる」と誓って息を引き取りました。
金長の忠義に感動し、正一位を得られないまま死んでしまった金長を哀れに思った茂右ヱ門はみずから京都へ出向いて吉田神祇管領所で正一位を授かり、「正一位金長大明神」として屋敷に祀り、代々子孫に伝えたといわれています。
ただの伝説とはいえない阿波の狸合戦
阿波の狸合戦は狸の世界の話で、架空のおとぎ話であり実際におこったことではないと思いますよね。
しかし、当時「狸が大々的に弔い合戦をするらしい」と人々の間でうわさになり、実際に様子を見に行くと現場となった勝浦川の河原にはおびただしい数の狸の死骸と争ったような跡があったという伝承が残っているんですよ。
また、大和屋の茂右ヱ門は実在の人物で、昭和31年に現在の場所に金長神社ができるまでは梅山家の屋敷に金長大明神の祠があり、茂右ヱ門の子孫がお祀りしていました。
金長神社を守るための御朱印
2019年の元旦から頒布が始まった金長神社の御朱印。
手すきの阿波和紙に染物屋の茂右ヱ門にちなんで藍を使った特別な墨で書かれていて、よく見ると青みがかった色をしているのがわかります。
11センチ×16センチの小さいサイズの御朱印帳からは少しはみ出す大きさでした。
金長神社の御朱印は御朱印帳に直接書いてもらうのではなく、すべて書き置きの御朱印をいただく形です。
和紙に藍の墨で書かれた御朱印は期間限定のもので、元旦と5月の例大祭、10月の第一日曜日のみの頒布となっています。
御朱印の頒布が始まった2019年のみ正月三が日までの頒布でしたが、2020年からは元旦のみのようです。
状況を見て、限定御朱印の頒布回数を増やすことも検討されています。毎回デザインが変わるそうなので、次の限定御朱印が楽しみですね。
これとは別に通常の御朱印もあり、通常の御朱印は金長神社ではなく近くの「地蔵寺」というお寺でいただくことができます。新四国曼荼羅霊場第80番札所のお寺で、地蔵寺の御朱印もいただけますよ。
〒773-0003
徳島県小松島市松島町11?26
御朱印を拝受するには300円の初穂料が必要で、御朱印代は金長神社存続のための活動に使われます。
参拝記念スタンプも
金長神社では、拝殿前には備え付けの参拝記念スタンプも新設されました。こちらは持参した御朱印帳やスタンプ帳などに参拝者が自由に押せるようになっています。
記念スタンプは「正一位金長大明神」と狸デザインの2種類があります。
金長神社がなくなる?
現在、小松島市では市営グラウンドを津波からの避難施設などを備えた防災公園として整備する計画があり、市営グラウンド内にある金長神社は存続の危機にあります。
この金長神社とは別に金長神社本宮がありますが、「平成狸合戦ぽんぽこ」はじめアニメや漫画などの作品に登場するのは市営グラウンドにある金長神社です。
金長神社はアニメ作品にそのままの姿で登場することからファンの方の“聖地”となっていて、遠方から参拝する方も多くいます。
金長神社は小松島市の観光振興のために作られたもので歴史は浅いのですが、茂右ヱ門が金長のために建てた屋敷内の祠をご神体としてこの場所に金長神社をお祀りしたことを考えると、簡単に取り壊すのは忍びないですよね…。
そこで、地域の有志の方々が「金長神社を守る会」を立ち上げ、何とか存続させようと署名活動や神社の清掃活動などをしています。
署名には海外からも多くの協力があり、1万筆を超える署名が集まりました。
金長神社存続のため、守る会の活動を支えるためにも、多くの人に金長神社の御朱印を知ってほしいです。
まとめ
多くの狸の伝承が残る徳島県でも一番有名な「阿波の狸合戦」の総大将、金長狸を祀る金長神社。
神社の存続の危機と新しく頒布が始まった御朱印を知って初めて参拝しましたが、金長神社は小さいながらも地域の人に愛されている雰囲気を感じられました。
また、義理堅い金長さんは私利私欲のためではなく、世のため人のためになる願いごとなら必ず叶えてくれるといわれています。大きな志を持った方にもぜひ参拝してほしい神社ですよ。